青崎有吾「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」
- 作者: 青崎有吾
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2014/04/21
- メディア: 単行本
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以下、収録作の簡単な感想。
- 「もう一色選べる丼」
- 絞り込みようがなさそうな謎を推理を積み重ね、推測を組み合わせながら解体していく過程が楽しい。
- ただ、裏染はともかく柚乃達には「そういう落とし所でいいのか!?」と声を荒げたくならなくもないけれど。
- 風ヶ丘五十円玉祭りの謎
- 五十円玉で謎といえば……なおなじみの話のパロディめいた謎が楽しく、裏染の暴挙といいラストのドタバタといいコメディの切れ味も収録作では一番かと。
- 非効率というか労多くして功少なしな真相で若干腑には落ちないものの、この真相を成立させるための努力にほだされてしまいなんとも憎めない一作。
- 意図したのかわかりませんが、イラストと裏のページ数の印刷が重なっているところが、ドタバタの原因を連想させてて好きです。
- 針宮理恵子のサードインパクト
- 具体的な推理の組み立てとかはともかく、大まかな真相は見えやすいれど、針宮が気づかない不器用さが物語として味わいを深めているし、ミステリとして成立させているのが上手い。
- 組み立てはともかくと書きましたが、推理の材料になる手がかりの細かさと推理の説得力には読みながらハッとさせられるので。大まかに気づいていても推理を楽しめるのがよかったです。
- 天使たちの残暑見舞い
- 完全に好みの問題でしかないのだけれど、鏡華のテンプレじみたキャラ付けといい(単に僕がこの手の同性愛者でない相手にコメディリリーフ的に言いよるキャラクターに惹かれないだけな気もするけれど)この話の早苗のノリのよさといい青崎先生の百合ネタはちょっとあざとすぎて好きになれないんだよなあ……。とは思うものの肝心の謎と推理は見事。
- 無理があるとまでは言わないけれど、すんなり納得しかねる個所もあるけれどぬけぬけとした手がかりと真相が好きです。
- その花瓶にご注意を
- 定石通りの推理からの展開が上手いし、畳みかけによる盛り上がりもあって好きです。
- つい先ほど青崎先生の百合ネタは好きになれないと書いた舌の根も乾かぬうちですが、即座に撤回させていただきます。
- それにともない、最初は蛇足じゃないかと思った「天使たち~」のある部分も必要だったと認識を改めさせていただきます。
- また、鏡華のキャラクター付けに関しても判断を留保し、彼女の恋愛がどうなっていくのかを楽しみにさせていただきます。
- 世界一居心地の悪いサウナ
- おまけの掌編。内容的には確かにおまけではあるけれど、今後へ期待を持たせてくれる一編。予告された第三(おそらく)の事件が語られるのを楽しみにしています。
短編集を通し裏染の案外人間らしい面が描かれ、柚乃が言うところの駄目人間の上に愛すべきという形容が(薄くではあるものの)つかなくもないかな……ぐらいには好感を持てました。