秀でよ凡才

出でよ天才と言われても出ていけない男

   今後の予定




   チケットの予約・取り置き希望はsugitamasataka@gmail.comまで

片山ユキヲ「花もて語れ」(11)

花もて語れ 11 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

花もて語れ 11 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

 積読すること数カ月、何の因果か朗読の日に……あれ? なんだか書き覚えが。さておき、いよいよ最終章となる朗読コンクールが開幕。藤色先生が勝てなかった五十土さんを前に新しいステップに挑む……。という11巻。
 いつものように作家論とハナちゃんが葛藤して精神的にも技術的にも成長する姿を絡めるわけですが、中盤までは作品やステップ5とステップ6についての最低限の解説は挟みながらもハナちゃんの朗読を中心に描かれている。「風博士」がこれまで扱ってきたものとは違ったタイプの作品ということもあって、「風博士」そのものの煙にまかれるような面白さとイメージシーンを楽しみながらどうやって文学論と絡めた山場を作るのか楽しみにしたところ……今回も期待にこたえていただきました。
 風博士の抽象概念的な描写が増えてどんどん不可思議になっていく物語(イメージシーンもより抽象性や乱痴気騒ぎを強調したものになってそちらにも魅了される)に引き込まれるのと合わせて安吾の文学論とそれに重ねたハナちゃんの決意が描かれてより引きこまれて感情を揺さぶられました。コンクール編の序盤だから大きな山場として描かれているわけではないですが、ハナちゃんの決意も10巻かけて作られた大きな流れがあるから胸に響きました。朗読を終えたあとにいい顔していてよかった。
 次の巻は五十土さんによる「瓶詰地獄」の朗読。これまた難しそうな作品をどう朗読してハナちゃんとの差を見せるのか、そして登場してから日が浅くて内にこもるタイプだからハナちゃんとちゃんと喋ったことがないので謎の多い……というか内面や人間性がよくわかるエピソードが描かれることなく(過去の話も藤色先生と折口先生の関係が中心だったし)ここまできた五十土さんはどのような物語を見せてくれるのか。楽しみにしています。

 しょうがないとはいえ、最後なのに満里子さんたちの見せ場はないのかなあ……。