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片山ユキヲ「花もて語れ(12)」

花もて語れ 12 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

花もて語れ 12 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

 読むのがもったいないからと先延ばしにする悪い癖が出て結果的に最終巻が出るのに合わせて読んだわけですが、長々積んでいた自分をぶん殴りたくてしょうがない。なぜとっと読まなかったのかと。
 完結を前にしたこの巻で描かれるのは藤色先生と折口さんと深い関係にある五十土さんの朗読。
 朗読の技術論・取り上げる作品・作者にまつわる文学論・ハナちゃんの成長や聴き手の人間ドラマの三本柱――作品の魅力的な描き方も重要だけれど、ストーリーとしては――で進むのがこれまで築かれた「花もて」のパターン。
 でも、今回は五十土さんの使うステップ6の解説や純文学と推理物との差がちょっとあるぐらい(ちょっとではあっても重要だけれど)で技術論と文学論は抑えて三人の物語と「瓶詰地獄」の重ね合わせに集中している。
 三人の間の葛藤自体は恋愛ものではよくあるパターンなのかもしれないけれど、折口さんと藤色先生のことはハナちゃんと満里子さんの気持ちも合わせてこれまで描かれてきたからもとから引きつけられているし、その二人に対して五十土さんの抱える物語――再び舞台に立った理由、「瓶詰地獄」を選んだ理由、そこに託した想い――と「瓶詰地獄」の一言では言い表せない作品の持つ力が響きあうから凡庸とか陳腐などとは一切感じさせないでどんどん没頭して最後の方は涙するほど感情移入したから朗読後に描かれるドラマが胸を打ってしょうがない。176ページの藤色先生の言葉とこの巻を締めくくるハナちゃんの言葉と表情には涙して、これまで読んできてよかったし序盤から引っ張っていた人間関係に決着がついていよいよクライマックスなんだなという感慨深さとどこか救われたような清々しい気持ちで読み終わりました。

 いよいよ完結でどんなフィナーレを迎えるのか期待が高まっています。ここでこういうことが描かれたっていうことは案外そういうことになったりするのかな? と不安なんだか期待なんだかしていますがどう転んでも素晴らしいものになっていると思うのでとっとと読みます。