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相沢沙呼「スキュラ&カリュブディス 死の口吻」

読書

スキュラ&カリュブディス: 死の口吻 (新潮文庫)

スキュラ&カリュブディス: 死の口吻 (新潮文庫)

 相沢さんは好きな作家なので買ったはいいものの怪死事件が中心に据えられたミステリと銘打たれていてもホラーテイストな表紙やあらすじから察するに本格として解決はしなさそうだし、嘘をつけと思われるかもしれないですがこの半年ほどで百合が嫌いになった(読んでよかったと思った作品は好きになりますけどね。相沢作品で言ったら「卯月~」の中の某作品とか)しで趣味とは微妙に外れているから持て余すかなと思ったんですが、面白かったです。
 小説に限らずこの手のエロスとバイオレンスに彩られた伝奇ものにはあまり触れていないから甘くなっているのかもしれないし、あまり触れていない僕ですら「話自体は青年漫画でよくありそう」と思ったのも事実ですが(と、言いつつ読んでいる間連想した作品は「Jの神話」なんですけれどね)、これまでの相沢作品らしからぬ少女が食いちぎられたように死んでいきその裏には謎の麻薬が存在するバイオレンスで物騒な展開や小道具にこれまでの相沢作品らしい太ももや胸へのフェティッシュな視線といったキャッチーな要素が多くて最後まで飽きさせずに楽しく引き込まれまたし、繊細な文章によって「よくありそう」で終わらせないだけの魅力もあったかと。
 相沢作品らしさと言えば思春期の息苦しさもこれまでとは違った角度から描かれていて、上に書いたことと併せて新境地を開いた部分と変わらない根幹とが両方見られたのもファンとしては嬉しいところ。


 百合に関しては個人的に早いうちから肉体的な繁がりを求めたり即物的な視線を投げかけるのが安直さというかあざとさが感じられることが多くあまり好きじゃない――男が女に即物的な視線を投げかける「マツリカ」とかは好きだから自分でもダブスタとは思うけれど――ので最初の方こそ軽くげんなりしかけたのですが、そうする必然性もあるし本能の欲求に抗う葛藤やそれでも官能的に見てしまう描写になかなかにドキッとさせられるくだりもあって、好きとは言わないまでもこちらもそれなりに楽しめました。百合・官能的なシーンの中では263ページから268ページにかけてのやりとりが背徳感があって一番好きです。
 シリーズ化を前提としているため若干消化不良なところもありますが、そこも含めて次巻以降に期待ということで……。


 ただ、くどいようですが相沢さんには僕のような人間のためにも「サンドリヨン」や「マツリカ」(路線)の新作も強く強く強くお願いしたいです。