秀でよ凡才

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6月30日即興テキストコント(5)お題「スベスベマンジュウガニ」

上司:被害者は自らの血液で「スベスベマンジュウガニ」と書き残した。俗に言うダイイングメッセージというやつだな。
   これはきっと犯人を示す重大な手がかりに違いない……。
部下:あの、ちょっといいですかね?
上司:うん、なんだ?
部下:長くないですかね? だって、被害者は瀕死だったわけですよね?
上司:ああ、急所に刺さったからな。おそらく絶命するまでは一分と持たなかったはずだ。
部下:そんな中で残すのが「スベスベマンジュウガニ」って長くないですか? 11文字ですよ。不自然ですよ。
上司:それでも被害者が残したんだからしょうがないだろう。きっと薄れゆく意識の中で「どうしても犯人を伝えたい」という執念で書いたんだろうな。
部下:だったら素直に犯人の名前を書けばよかったのに。
上司:バカを言うな。そのまま名前を書いてもし犯人に見つかってみろ。消されるに決っているだろう。
部下:そうですけど……。
上司:だから、犯人に見つかったところでちょっと見ただけでは問題ないと見逃すような仕掛けが隠されているんだろうよ。
部下:なるほど……。
上司:つまりこれを頼りにいくら考えてもわかるわけないから考えるだけ無駄だ!
部下:なんですかそれ! すっかりダイイングメッセージを解くのかと思ってましたよ!
上司:いいか、このダイイングメッセージではこの事件は解決しない! 俺の刑事生命を賭けてもいいぜ!
   そんなことより、関係者の情報を教えてくれ。
部下:はい。まず被害者の妻の麻里。犯行があったと推定される時刻には買い物に出ていてアリバイはありません。
上司:なるほどな。
部下:そして、被害者の一人息子智宏。犯行推定時刻は大学の講義をサボっていたとのことで同じくアリバイはありません。
上司:ふむ……。
部下:そして、被害者の秘書山田スベスベマンジュウガニ……。
上司:……。
部下:……。
上司:……。
部下:これ、ダイイングメッセージ……。
上司:関係ない! ダイイングメッセージでは絶対この事件は解決しない! 関係ない!
部下:でも……
上司:俺が刑事生命を賭けたんだから絶対関係ない!
部下:でも、こんな名前なんですよ、絶対犯人ですって!
上司:バカ野郎! 取り調べもしてねえってのに、決めつけてかかるんじゃねえ! 捜査に私情と憶測は持ち込むんじゃねえ!
部下:正論を言われたはずなのに釈然としない。
上司:他に関係者はいないのか!
部下:えーと……被害者の部下で蟹江……
上司:そいつだあ! そいつだよ犯人!!
部下:はあ?
上司:そいつだよ、犯人! だってダイイングメッセージがスベスベマンジュウガニだろ? じゃあ蟹江ってやつの仕業だよ!
部下:だったらカニでいいでしょ。スベスベマンジュウと濁点はどこから来たんですか?
上司:実は被害者は最初カニとしか書いていなかったんだよ。それを見た犯人が別の人物を犯人に仕立て上げるために書き換えたんだよ! そうにきまってる!
部下:いや、でもだったら山田スベスベマンジュウガニの方が……。
上司:絶対違う!
部下:なんでそこまでこだわるんですか?
上司:さっきも言っただろう、このダイイングメッセージでは事件は解けないと。だから山田スベスベマンジュウガニは絶対犯人じゃない!
部下:ダイイングメッセージじゃ解けないことを証明するためにダイイングメッセージで解こうとしないでくださいよ。
   絶対、この山田スベスベマンジュウガニが怪しいですって……。
上司:バカ野郎! さっきも言っただろう! 捜査に私情と憶測は持ち込むんじゃねえ!
部下:それしか持ち込んでいないでしょう! わかりましたよ。じゃあ、まずこの蟹江って秘書から取り調べをはじめます。






部下:いやあ、まさか警部の推理通りとは……。
上司;言っただろう。この事件はダイイングメッセージでしか解けないと。
部下:うるせえよ。