秀でよ凡才

出でよ天才と言われても出ていけない男

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8月20日即興テキストコント(1)お題「遠心力」

 一ヶ月以上開きましたが、例によって例のごとくその間なにも考えなかったのでどうかご容赦を。

女:みんなー! ちびっこ科学ショーがはじまるよー! 今日は「遠心力」について勉強するよー!
男:お姉さん、遠心力ってなあに?
女:お兄さん、ここに液体の入ったバケツがあるよね。これをさかさまにするとどうなるかな?
男:こぼれるに決まってるよ。
女:そうだよね。でも、このバケツを勢いよく振り回すとさかさまになってもこぼれないんだよ!
男:えー! 本当にー!
女:そうだよ! じゃあお兄さん試しにやってみてくれるかな!
男:うーん……びしょぬれになったら謝ってね。(バケツを振り回す)うわあ、本当だ! こぼれない!
  (何度も振り回しながら)すごいよ! すごいよお姉さん! これどうなってるの!
女:うふふ。バケツを勢いよく振り回すことで液体が外に向かって引っ張られる力が生まれるからこぼれないんだ。
  この勢いよく振ったときに生まれる「外に向かって働く力」のことを「遠心力」と言います。
男:(振り回しながら)へえ! そうなんだ! すごいなあ、遠心力って!
女:ねえ、さっきからお兄さんがバケツを振り回しても濃硫酸がこぼれないでしょ!
男:(振り回すのをやめて)ちょっと待って! これ水じゃないの!?
女:そうだよ。
男:危険すぎでしょ濃硫酸って!?
女:でも、遠心力でこぼれないんだから中身なんてどれでも一緒でしょ。
男:そういう問題じゃないよ! 危ないってことを……
女:それよりも振り回さなくていいの?
男:誰が濃硫酸の入ったバケツを振り回すんだよ!
女:でも、そのバケツとお兄さんの首輪につけた爆弾が連動していて、
  十秒以上振り回すのをやめていたらその瞬間に爆発する仕組みになっているんだよ。
男:はあ!?(急いでバケツを振り回す)なんだよそれ!?
女:先週のショー「遠隔操作で作動する爆弾作り」で作ったやつだね!
男:(振り回しながら)先週、なにやってるんだよ!
女:あれ? 先週のショーってお兄さんお休みしてたっけ?
男:(振り回しながら)先々週の「人体にギリギリ有毒な量の毒を食べさせてみよう」のせいで入院していたからね!
女:そっか。あ、ちなみに振り回し始めてから三分以内に百回振り回せなくても爆発するからね。
男:(振り回すペースを挙げながら)畜生!!!
女:じゃあ、お兄さんが振り回している間に科学の説明を続けるね。
  お姉さんねえ、ちょっと前までヒモの彼氏がいたんだ。
男:(勢いよく振り回しながら)は?
女:働きもせず私に金をせびってばかりのろくでもない男だった。
  そんな彼のことが心配で「この人を救えるのは私だけだから」ってずっと我慢してた。
  でも、もう許せなくてね思いっきりフって、同棲していた彼の部屋から出て行ってやったの。
男:(勢いよく振り回しながら)何の話だよ!
女:そうしたら、相当こたえたらしくてね。あれだけ嫌がっていたのにアルバイトを見つけて働き始めたんだ。
  最初は悪いことしちゃったかもって思っていたけれど、フられたのがきっかけで力が出たのかなあ……って。
  勢いよくフることで、外に向かって働く力になる。これも「遠心力」って言えるのかなあ?
男:(勢いよく振り回しながら)違うわ! なんだよ、長々と自分語りしやがって!
女:それでお姉さん、辛い想いをさせられて彼のことが本当に嫌いになったはずなのに、
  慣れない肉体労働を頑張っている彼のことを考えると、どうしようもなく愛おしくってしょうがないんだ。
  これって、何の力なのかなあ?
男:(勢いよく振り回しながら)知らねえよ!
女:科学の力でわかるかなあ?
男:(勢いよく振り回しながら)科学に何を求めてるんだよ! そこまで万能じゃねえよ!
SE:ビーッ!
女:あ、お兄さんが百回回せたみたいだね!
男:(振り回すのをやめて倒れこみながら)そうなの! やった! 助かった!
女:お疲れ様、お兄さん!
男:もうやだ、最悪だよこんな仕事!
女:そんなに嫌なら辞めればいいのにね。
男:しょうがねえだろ! ヒモになってた女に振られていそいで仕事探したらここしか受からなかったんだよ!
女:なんだ、じゃあお兄さんには最初から遠心力が働いていたんだね。
男:うるせえよ。