秀でよ凡才

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片山ユキヲ「ふろがーる!」(1)

ふろがーる! 1 (ビッグコミックス)

ふろがーる! 1 (ビッグコミックス)

 生実野早夜子は食品会社に勤めるOL。涼しい顔で仕事をこなし同僚ともあまり交流しないクールな彼女には入浴というひそやかな楽しみがあった。季節やそのときの気分に合わせて自宅の浴室を変わり湯にして堪能する早夜子はバイクを手に入れ温泉巡りに出すようになる。


 前作の「花もて語れ」が大好きなので新作も楽しみにしていたものの、入浴が題材ということで「僕が読みたいのはビルドゥングスロマンであって、日常のささやかな楽しみや幸せじゃないんだよなあ」とどうもテンションが上がらずしばらく放置していましたが、気が向いたので試しに読んでみたら「あれ? 思った以上に面白いぞ」となり、一気に読みました。


 趣向を凝らした湯船や絶景の中の温泉ににつかったときの悦楽が「花もて」で見せ場として使われていたようなイメージシーンで描かれているのが言語化できない快感を表わしていて蕩けそうな表情も合わせて気持ち良さが伝わるし、一話8ページと短いながらも準備や旅の過程をちゃんと描いて(その準備や旅を楽しんでいるので早いうちから引き込まれる)いるからイメージで表される入浴シーンがカタルシスになって快感と同時に面白さを感じて読めば読むほど魅了されました。プラネタリウム風呂の幻想さと準備に準備を重ねて汗をかいてからの重層風呂が特に印象的でした。
 中盤からは自宅を離れ盟友シローさんと温泉巡りへ繰り出して旅漫画・グルメ漫画の趣も濃くなっていて、こちらもこちらで雄大な景色や各地の名物がことごとくフックになっていて楽しいけれど、個人的にはもうちょっと自宅の浴室を舞台にミニマムに楽しむのも見たかったかな。自分でも試してみたくなるし。
 個人的にすごく好印象だったのが(人によってはマイナスなのかもしれないですが)裸を描いても片山さんのタッチには俗っぽい色気がないので(だからこそ「花もて」で入浴シーンがあるたびに「似合わないサービスシーン入れんでも」と思ったりもしたけれど)扇情的にならないこと。おかげで変に気恥しくならず湯船につかる快感を味わえました。
 月末に発売される二巻はすぐに読みます。