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エトガル・ケレット「あの素晴らしき七年」

読書

あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス)

あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス)

 「戦時下のイスラエル」に暮らす作家エトガル・ケレットが息子の誕生から父の死まで七年の間に起こった出来事をつづるエッセイ集。海外文学には疎くて作者のことも全く知らなかったのですが、先日、文化系トークラジオLifeの番組開始十周年のイベントに参加したときに倉本さんが熱烈に薦められていたのをきっかけで読んだらこれが面白いのなんので夢中になって読みました。


 夢中になった理由を語ろうにも「物の見方と表現の仕方が面白い」というエッセイに限らず優れた創作物すべてに当てはまる浅い感想しか言えないのですが、日本でも起こりうる日常の生活や世界を飛び回るなかで体験した奇妙な出来事をユーモラスに描くだけでなく、それら平穏な日常と日本では起こり得ない緊迫した暴力が地続きになっている――しょっぱなから息子の誕生を待つ横でテロの被害にあった人が病院に運ばれてきた様が描かれているし、電話勧誘の鬱陶しさを語るのにもイスラエル情勢が影を落としているような――中での苦しみや怒りすらも物の見方と表現によってユーモラスに描いているところに惹かれました。
 読んでいくうちに、人生の素晴らしさを笑いを交えて表現することを理不尽でやるせないイスラエル情勢への対抗手段として選び(怒りややるせなさを吐露するときであってもそこはブレていない)、一篇一篇の中に笑いや悲しみや愛を詰め込んで魅了させるエトガル・ケレットの人間性にも惹かれるし、描く家族や友人も魅力的でどんどん親近感がわいてくる。息子レヴの成長には「大きくなったなあ」感慨深くさせられるし、父の死にも胸に込み上げるものがありました。


 どうしても感想を書きたかったものの、その気持ちに追いつくだけの言葉やセンスがないのでも以上に浅いところで留まったことしか書けませんが、面白かったし、作者のことが好きになったことだけは伝えたいです。小説も絶対に読もう。