秀でよ凡才

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志村貴子「娘の家出」(1)

 昨年、「放浪息子」と「青い花」の二作を完結させた志村貴子さんの最新作。
 描かれるのは主人公の少女まゆこをはじめとする面倒な家庭環境に置かれた面倒な時期の少女の物語。異性になりたがる少年少女や同性愛に悩む少女といった奇異に見られがちな人物を題材にする志村作品の中では特殊な環境に見えないけれど、それでも彼女たちを取り巻く環境や彼女たちの性質はやっぱり「普通の少女」とはちょっと違う(人間なんて普通とは違う部分の集合体じゃねえかって話ですが)もの。
 そのことに思い悩んだり思春期特有の大胆な行動を取る姿や図らずとも特殊な環境を作ってしまった大人たちの事情が語りつくさない感情表現で語られていて読みながらこちらの感情も心地よく揺さぶられました。相変わらずどこが良かったのか言語化できないのですが、こういう感情を体験できるのは至福の一言。

 読み切りと全三回の短期連載を経て、まゆこら離婚した親を持つ「チーム離婚」の物語として本格連載になったため、この巻ではオムニバスの短編集といった印象で今後どうしちめんどくさいことをしたりしなかたりするのか非常に楽しみです。群像劇大好きだし。
 あと、「放浪息子」の「放浪」は比喩的で実際に放浪したわけでない(未遂はあったけれど)ように、この漫画の「家出」にもどういう意味を持たせてくるのか楽しみ。単に話が始まるきっかけだけで終わらせるとは思えないので。