秀でよ凡才

出でよ天才と言われても出ていけない男

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片山ユキヲ「花もて語れ」(10)

花もて語れ 10 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

花もて語れ 10 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

 なんだかんだで積んでいましたがそろそろ新刊が出るしそろそろ朗読の日だしでいい加減読まないなと思って。
 年末年始を伯母さんのもとで過ごすハナちゃん(と谷村君)の帰省についていく満里子さん。しかし、失態がもとで急ごしらえで朗読をすることに……。という導入から始まる10巻。9巻もそうだったけれど、満里子さんがどんどん可愛く……もといダメになっていてとてもとても愛らしい。72話冒頭の意思が強い凛々しい表情と最後の顔芸をした人が同一人物とは思えないよ。
 「ぽっぽのお手帳」の朗読は最後の山場へのつなぎとあってか文学論を絡めた朗読はこれまでに比べるとだいぶあっさりしているけれど、第二の故郷でハナちゃんのルーツを振り返ることでハナちゃんはどういう幼少期を過ごし折口先生・朗読との出会いがいかに重要なのかを再確認して次の展開への布石になっているし(これまで朗読に向けて丹念な下準備をしてきたことが描かれていたから「今回は準備なしで大丈夫なの?」と思ったけれど、ここで十分な準備期間がなくてもできてしまうことがそのまま壁になっているところが上手いな)、単体のエピソードとしても童話に込められた我が子への愛と「世界との窓」である物語との出会いがいかに素晴らしいかという普遍的で共感できるテーマに温かい気持ちなれました。
 東京に戻ってからはハナちゃんに折口さんと藤色先生、そして五十土さんの因縁が語られ人間関係(若き日の藤色先生の涙に胸が締め付けられる)が錯綜し、技術的にも精神的にも乗り越えるには困難な壁にどう立ち向かっていくのかを煽って次巻へ……。
 残り三巻で完結と告知され寂しくもありますが、ハナちゃんの成長と恋模様の決着とに文学論を絡めて最後にどのようなドラマと描写をを見せてくれるのか期待しています。いろいろと気になることはありますが、今更言っても恥を書くだけなんでとっとと11巻読みます。