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相沢沙呼「雨の降る日は学校へ行かない」

雨の降る日は学校に行かない

雨の降る日は学校に行かない

 相沢さんは好きな作家さんなので買ったはいいものの推理小説じゃないっぽいからなあ……と積んでいましたが、新刊が出たので崩そうかと。
 前作の「卯月の~」を読んだときは「冴えない学生時代を『サンドリヨン』や『マツリカ』で成仏させられた僕達*1のことを裏切りつつあるぞ!」と思い、そりゃあ内向的といえば聞こえはいいけれど、実際はひたすらに気弱で悩んでばかりでそのくせリビドーを迸らせる少年が美少女に恋に落ちて成長する姿を描くよりも、同じような悩みを抱えていても繊細な少女たちを描いた方が一般受けとするでしょうよ! そのためには当初の客であった十代から同世代の男ども(一方的な決めつけ)を切り捨てるでしょうよ! と、卑屈になったものですが(誇張あり)、この本を読んでその考えが間違いだったと気付きました。
 たとえ一般受けを意識しているとしても、主人公の性別やら細かいことが変わるだけで学校や集団の中で息苦しさを感じてしまう人を描いていて、年齢性別にかかわらず実際にそういう思いをしている・していたことがある人に向けて発信していることはデビューしてから一貫して変わりないのだから。
 六人の少女の悩みは他者から見れば「他愛もないこと」で済まされるのかもしれないけれど、他愛もないことが大問題になるからこそ難しいし辛いわけで、スクールカーストの上位になれないことで受ける些細なつもりの悪意に苦しんだり気持ちの伝え方がわからずに悩む姿には感情移入というかオーバーラップというか逆に自分にはない感性だけに痛々しすぎて見ていられない(誉め言葉)というかで、とにかく肌に迫るような生々しさを感じました。
 とはいえ女子中学生が呼んでどの程度リアルに感じるかわからないし、一部メッセージを語りすぎているのが気になったりもしますが、絶対にこの本を必要にする人はいるはずだし相沢さんにはこれからもそんな人のために作品を書き続けてほしいです。



 ただ、やっぱり僕のような人間のためにも「サンドリヨン」や「マツリカ」(路線)の新作もお願いしますね。

*1:「達」。あくまでも「達」。