秀でよ凡才

出でよ天才と言われても出ていけない男

   今後の予定




   チケットの予約・取り置き希望はsugitamasataka@gmail.comまで

7月1日即興テキストコント(3)お題「あざらし」

あざらし:キュウキュウ キュウキュウ
彼氏:うん、あの……結婚するんだよね、僕ら。
彼女:そうよ。
あざらし:キュウキュウ キュウキュウ
彼氏:で、君は結婚の証として僕にあざらしをプレゼントすると。
彼女:そうよ!
彼氏:……あの出身どこだっけ? なにかそういう風習でもあるのかな?
彼女:なに言ってるの! そんな風習なんてないよ!
彼氏:じゃあ、なんであざらしをプレゼントするのかな?
彼女:だってかわいいから!
彼氏:だってでは接続できない理屈だよ。
あざらし:キュウキュウ キュウキュウ
彼女:ほらあ! 鳴き声だってかわいいでしょ!
彼氏:そりゃ、あざらしはかわいいけれどさ……。
彼女:初めて会ったときに私のことかわいいって言ってくれたでしょ。
   だから、かわいいあざらしを肌身離さず持ち歩けば、私のこといつも思い浮かべてくれるかなあって……。
彼氏:乙女心なんだねえ……。彼氏としてはキュンとしたいけれど、あざらしを選択されたら突飛過ぎて無理だよ。
   で、肌身離さずって言ったよね? 僕はこのあざらしを肌身離さないで生活しなきゃいけないの?
彼女:そうだよ、指輪みたいに輪を通して左手の薬指にはめてもらうんだ!
彼氏:え、結婚指輪代わりなの? このあざらし!
彼女:……バカ! 結婚指輪は二人の愛の証なんだからね! 代わりなんてないんだからね!
彼氏:彼氏としては機嫌を損ねたことに謝るべきなんだろうけれど、処理すべきことがあるから後回しにするね。
   じゃあ、結婚指輪と結婚あざらしを左手薬指にはめるわけだね。
彼女:もちろん!
彼氏:じゃあ、僕は常に左手にあざらしをぶら下げて生活するわけだよね?
   そんな姿を見たら周りの人はどういう風に思うかわかる?
彼女:行き過ぎた動物虐待だなあ……。
彼氏:その判断を下した上でなお指にはめろと言うのかい?
彼女:だって、あなたの愛だったらこれぐらいの障害を乗り越えてくれるでしょう? 私、あなたのこと信じてるから!
彼氏:乗り越えてほしい障害を自分から作らないでよ。
あざらし:キュウキュウ キュウキュウ
彼女:でもさあ、愛の証にあざらしを送るってロマンチックだと思わない?
彼氏:思っていたらこんなに困惑していないよ。
彼女:だって、あざらしのキュウキュウって鳴き声、どこか「好きよ、好きよ」って聴こえない?
彼氏:申し訳ないけれど、聴こえないよ。恋愛感情込みで甘く査定したところで「きよ、きよ」としか聴こえないよ。
彼女:バカだなあ。「好きよ」って言いたいけれど、勇気が出なくて、言い淀んで小さく口にしたときの「好きよ好きよ」じゃない。
   あなたと付き合う前、いつも写真に向かって同じこと言ってたからわかるんだ……。
彼氏:さっきからちょくちょく乙女心見せるのやめてくれるかな? なんだかんだで嫌いになれないから。
彼女:それに英語にも聴こえるんだよ!「Kill You Kill You」って!
彼氏:それ、ロマンスの対極にある感情だよね?
彼女:もう、わかってないなあ! 殺してすべてを自分のものにしたいって乙女心じゃない!
彼氏:多分それ、乙女心で括っていい話ではないと思う。え、ていうかそんなこと考えてるの?
あざらし:Kill you Kill You
彼氏:あれ? いまKill Youってハッキリ言わなかった?
彼女:気のせいだよ! それより、迷惑だった? 私のこと嫌いになった?
彼氏;正直、最後の最後で雲行きが怪しくなったけれど、それでもそんなところも含めて君が好きだからいいよ。
彼女:わあ、ありがとう!
あざらし:Kill You Kill You
彼氏:でも、こいつはやっぱり受け入れられそうにない!