読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

秀でよ凡才

出でよ天才と言われても出ていけない男

   今後の予定




   チケットの予約・取り置き希望はsugitamasataka@gmail.comまで

7月12日即興テキストコント(3)お題「限界」

テキストコント

男:……すみません。限界です。
店主:ギブアップ?
男:はい。お腹いっぱいです。ごちそうさまでした。
  じゃあ、チャレンジに失敗したんで、五千円を……。
店:いらねえよ。
男:なんでですか! この超特盛りジャンボラーメン早食いチャレンジは三十分以内に完食できたら賞金一万円、失敗したら五千円を払うってそういうルールじゃないですか!
店:でもいいよ。払わなくて。
男:なんでですか、払わせてくださいよ!
店:だって、一口しか食わないでギブアップしてんじゃん!
男:なおのこと払うべきでしょう! 全然食べないで限界になったんですから!
店:お前、このひと月毎日挑戦して、毎日一口でギブアップしてんじゃん! お前、バカにしてるだろ!
男:そんなことないですよ!
店:チャレンジして一口しか食べないでギブアップしておいてよく言うよ! わざと残しやがってよ!
男:違いますよ! 僕は本当に一口だけでお腹いっぱいになって……
店:だとしても、ひと月続けてる時点でわざとだろ! わかるだろ自分の限界がどこかぐらい!
男:それは……
店:そりゃ、こっちだって無理に食べろとは言わないけれど、こっちだって真心込めて作ってるんだよ。
  真心こめて作った料理をろくに手をつけられないまま生ゴミとして捨てる気持ち考えたことあるのか!
男:まあ、いつももったいないなとは思いますけれど……。
店:だろ!? こっちは二週間前からお前が帰ったあと泣きながらお前の食い残しを食べてるよ!
男:ちょっとやめてくださいよ! 箸を通して間接キスするみたいで嫌じゃないですか!
店:口をつけた箸を二度とどんぶりに入れたこともないくせに気味悪がってんじゃねえよ!
  とにかくね、こういう嫌がらせとかされると困るんで出入り禁止に……。
男:ちょっと待ってくださいよ! 嫌がらせとかじゃないですよ!
  僕は純粋にチャレンジがしたい……いえ、一万円が欲しいだけなんです!
店:はあ……?
男:僕ねえ! 働きたくないんですよ!!
店:そんな大声で言うことじゃないだろ。
男:一年前に会社を辞めてからずっと働いていなくて。
  で、お金がないから、ご飯もろくに食べられなくて十日間ぐらい水しか飲まない日が続いたりして……。
  それでどうしようか迷っていたらこの店の早食いチャレンジの看板を見つけましてね。これだと思いました!
  だって、一万円ですよ、一万円! 毎日成功すれば月収三十万じゃないですか!
  喜び勇んで挑戦しましたよ。……でもねえ、胃が小さくなってたんでしょうね。一口食べただけでお腹いっぱいになっちゃいました。
  悔しかったし五千円の出費も痛かったですよ。でも月収三十万のためです。ここで諦めるわけにはいきません。
  それから毎日通ってこの店のジャンボラーメンの早食いチャレンジを続けているんです。ただそれだけなんです!
店:とりあえず、お前がクズなバカだってことはわかったよ。
男:お願いします! 月収三十万円のためなんです! 出入り禁止にしないでください!
店:三十万欲しさに、すでに十五万も赤字出ているけれどいいの?
男:初期投資ですよ。初期投資。
店:いいように言ってんじゃねえよ。ていうか、よく十五万も払えたね。
男:親父に事業を始めるからって頭を下げました。
店:なにやってんだよ! 親父の期待裏切るなよ! でもって、大食いの賞金を事業扱いするなよ。
男:お願いします、明日からも挑戦させてください!
店:挑戦してもいいけれど、絶対成功しないぜ。一ヶ月かけても一口しか食べられないんだし。
男:いやでも、少しずつ胃が大きくなってるのか、ここ三週間はもうちょっと食べてもいいかな……って気になってます!
店:進歩が微増にもほどがあるよ! いまだに行動に移せていないわけだし!
男:じゃあ、いきなりジャンボラーメンだとハードルが高すぎるんで、
  もっと楽なところから半チャーハンの大食いチャレンジとかありませんかね?
店:ないよ! あったところで、ラーメン一口で限界だったら絶対失敗するでしょ!
男:制限時間十二時間とかで……。
店:無理言うなよ!
男:あ、そうか回転率悪くなっちゃいますもんね!
店:そういう問題じゃないよ!
  ていうかね、君もねラーメンの大食いだとか言ってないで真面目に働いたらどうだい。
男:いやあ、でも三十分で一万円もらえるのに真面目に働くなんて……
店:その考えで大損しかしていないよね? そんな考え捨てて真面目に働きなよ。
  幸い、今、うちの店の人手が足りてないから雇ってあげようか。
男:え? いいんですか?
店:三十万円とはいかないけれど、ちゃんとお給料は保障するから。
男:……あの、ひとつ質問いいですか?
店:ああ、なんだい?
男:まかないでジャンボラーメンって食べて大丈夫ですか?
店:どれだけジャンボラーメン食いたいんだよ!