明日は文フリです
5月4日。ある映画を観に新宿に行ってきました。
一番好きで説明しようとするだけで泣きかけるほど思い入れのある映画が「無防備」で、好きな小説家を訊かれたら確実に名前を挙げるくらい初野晴が好きだ(特に「1/2の騎士」)と常々言っており、twitterでも「映画に興味はなかったけれど、監督が市井さんなら絶対観に行かなくては!」とテンション高くつぶやいていたにもかかわらずタイミングを逃し続けてすっかり見逃したと思っていたものの、月曜にたまたま角川シネマの前を通ったら今週の金曜日まで上映していると知り、バイトの休みにあわせて(監督と原作の名前を出しておいてなんですが、あれだけ言っておいたのに遅きに失するにもほどがあって恥ずかしいのでタイトルは控えさせてください(苦笑))行ってきました。
今さらにもほどがあるものの、タイミングを逃し続けたおかげで「無防備」を観たシネマート新宿と同じ建物で観る(しかなくなる)ことになって感慨深いものが(二ヶ月前に行っても上映はしていただろうけれど)。
さてさて。原作通りにエピソードを重ねて作っても二時間でキリよく収まらないというか、一人一人掘り下げるだけの時間もないからどうするのかなと思っていたので、ミステリをざっくり削り登場人物もほぼオリジナルにして青春・部活・陽の面を盛り込んだ(特に演奏シーンは初野さんがあえて描いていないところなので、それが映像でじっくり見られるだけでも映画化された意義があるし)のはいいとして、一番の特色(ミステリとそこに落とす陰の部分)を削った代わりに入るのが弱小部活ものではオーソドックスなイベントだったため、中盤ぐらいで「これは初野晴と市井昌秀の無駄遣いにならないか?」と危惧もしましたが、大会からラストへの流れ、特にラストの映画ならではの清々しい虚構が楽しくてよかったです。
主演の二人も合っていて最初は「橋本環奈じゃ美人すぎない?」と思っていましたが、暴力ヒロインぶりがハマっていたし、佐藤さんも最初に「チカちゃん」と言ったときの弱さに「おお! ハルタだ!」と思うほどでした。
とはいえ、初野晴と市井昌秀双方のファンとしては陰と葛藤の化学反応、そしてそこからのカタルシスを観たかったという未練はどうしても残りますが、それを求めるのは少数派だからしょうがないですね。
余談ですが、途中何度かあった全力疾走するシーンで「あの女はやめとけ」のカットバックからの犬のシーン(大好き)を思い出して軽く笑いそうになってしまった、。
と、感想を書いたところでそもそもなんで「無防備」が好きなのという話。
これもちょくちょく言っていることですが、内容もさることながら観た時期が大きく影響していまして。
当時、芸人を目指して好きな芸人さんがたくさんいる事務所が運営する養成所に入ったにもかかわらず、なんの成果も出せないどころかこれぐらいはできると思っていたことのはるか手前のことすらできずに今後どうなっていくのか気を重くしていたときで、そんなときに元芸人の映画監督が撮ったこの映画にどれだけ救われたか。
横着して当時のブログから感想をコピーしますが。
観に行って本当によかった。主人公の律子と状況は全然違うけれど、空回りの日々が続いていて悩んでいた気持ちがすっかり消えて楽になりました。(中略)
市井さんが映画監督として活躍しているのは元々持っていた才能や努力があった上での事なのは分かっていますが、僕も演者としての道が閉ざされたとしても、何かしら自分のやりたい事を表現していけばいいんだなというか、お笑いは大好きだし舞台上で自分が作った面白い(と考えている)事を表現できる芸人になりたいけれど、その事にこだわり過ぎる必要もないのかなと思えた。……って書くと語弊がありますが、たとえ芸人になれなくても人生は続いていくわけだし、お笑いの文法が生かせる演者以外の表現を何年かかっても探してもいいんじゃないのかと考えると、たった半年後にどうなっているかと不安になっている悩みがちっぽけなものに思えてきて……あの、念のために言っておきますが、養成所辞めるつもりは粉微塵もないですからね(笑)。
いまさらながら曲がりなりにも人前に立とうというやつが生のままのナーバスさを表に出すなよ。せめて加工しろ。あと、後半が言葉重ねすぎて無駄に長い(これは今も変われてないいけれど)。
さておき。そういう理由で「無防備」が一番好きな映画であって、ともすれば映画と人生にまつわるちょっといいエピソードにもなりかねないですが、美談からかけ離れているのはこう書いてから七年半が経つけれど、未だに芸人にも演者以外の表現者にもなれていないから。
「三年経って十年経って変わらないものなどない」とは言うけれど、僕といったら三年を大きく過ぎ、十年まであと三年を切った今で2009年と大差ない自称芸人志望でしかないわけです。
なんで急にyes,mama ok?を引用したのかというと、「 incomplete questions」が出てミュージシャンとしての金剛地武志に触れたのが養成所に入る直前で聴くと養成所時代を思い出すから。閑話休題。
今月で、八年が経つ。未だに何者かになりたいとは思っているけれど、何者かになれるための行動を取れているのか。そのひとつになっているのかどうか、どこに至る道に繋がっているかはわからないですが、文学フリマに向けてテキストコント集を作りました。
というわけで、明日の文フリで頒布するテキストコント集の紹介です(前フリ長よ!)。
イ-52ブースで新刊の「言い訳すらもが下手なまま」というテキストコント集を出します。
色んな事をあきらめて 言い訳ばっかりうまくなり
THE BLUE HEARTS/ラインを越えて
言い訳だけは一人前さ 俺には夢が夢があるんだ
怒髪天/宿六小唄~ダメ男に捧ぐ~
などなど、言い訳だけ上手くなるといった歌詞に触れるたび、窮地に陥ったときは居直りと逃避しかしてこなかったので「言い訳するだけでも僕よりははるかに偉いよ」と思い、偽るための言い訳すらもが下手なまま年齢だけは大人になってしまったな……。
なんてところからタイトルをつけたら、本番直前なのに全然仕上がらない窮地、具体的に言うと七本のネタのうち六本を直前も直前になってゼロから作りだす事態に陥り、居直りも逃避もできずになんとか完成にこぎつけたというそれなりに因果応報な一冊になりました。
とはいえ、どのネタも面白いものになったとは思うのでよろしければ冷やかしに来てください。
コント:面通し
漫才:オーディション
コント:スポット
漫才:換骨奪胎
コント:学園祭翌日
漫才:ハーフタイム
コント:崖の二人
以上の七本でお待ちしております。